Virgil Ablohという異端児の快進撃
ストリートというスタイルがトレンドではなく、ファッションの型として捉えられるようになって早2年ほどになる。
オフホワイトのスニーカーに取り付けたタイラップ(結束バンド)、工事現場でとび職のお兄さんたちがカチャカチャいわせているようなガチャベルト、グッチを率いるミケーレでさえもキャッチーなスウェットを取り入れるなど、もうそれらのアイテムはストリートのものではなく、モードの中でも当たり前のように使用されるようになった。
tenはこの記事をタイピングしている今この瞬間、あえて名指しするなら、“ヴァージル・アブローはシャネルのような変革を起こしているのか?”という錯覚に陥った。
ウィメンズウェアに誰も取り入れようとしなかったジャージー素材、マリンたちが仕事着として着ていたボーダーのカットソー、喪服の時にしか使用しない黒をモードの象徴というステータスにしたこと。
アブローは今やラグジュアリーブランドでは誰もが知っているであろう「ルイ・ヴィトン」のデザイナーであり、自身のブランド「オフホワイト」のデザイナーでもある。
ナイキやjimmy choo、ssense、monclerなど、イケアとのコラボレーションは記憶に新しい。ten自身、休日はめったに早起きしないが、KEEP OFFのカーペットを入手すべく早朝からイケアの立体駐車場に並んでいた1人である。(あれだけのsupremeやsupreme x north faceを着ている集団を見かけることも、もうそうにないと思う。)
アブローのデザインするものが好きだ、とは言い切れない。古い人間だからか、彼のストリートデザインをわざわざクチュールメゾンであるルイ・ヴィトンで打ち出す必要性や理由が私には理解出来ないから。
かといって、アブローのクリエイション全てが気に入らないというわけではない、というのも、彼の作品は、人とアートとの距離間を今までよりぐっと近づけたと思うから。
ファッションだけではなく、デザインという分野で建築学が取り入れられつつある現代は、もとより建築学を専攻していたアブローにとって、飛躍しやすい環境(時代)だったとも捉えられる。
アブローにおいてだけの話ではないけれど、次はこのカラーリング、シルエットだと馬が飛び跳ねるようにitなアイテムに飛びつくのではなく、そのアイテムの付加価値を見つけられるような人になりたいと切実に願う。
誰もが圧倒されるヴァージル・アブローという異端児の快進撃は、まだまだこれからも続いていくのか。シャネルのような伝説として、ファッション史に名を残すことには間違いないだろう。